CoCシナリオ 作者:ホリ 耶話鳴えオリジナルシナリオ

星空荘の怪異譚

投稿日:2015年12月30日 更新日:

はじめに

シナリオの概要

 山梨県の茅ヶ岳(かやがだけ)にあるペンション「星空荘」。市街地を離れ、空気も澄んだ場所にあるこのペンションは、天体観測には絶好の宿泊施設だ。探索者達は各々の理由によってこの星空荘を訪れることになる。

 素敵な小旅行を堪能するはずだった探索者達は、しかし、そこで星空荘のオーナーである星野康臣の無残に殺害された死体や、建物を囲むように現れた奇怪な化け物達と遭遇する。このままでは自分達も殺されてしまうと、身の危険を感じる探索者達。彼らは無事にこの星空荘から脱出し、平穏な生活に戻ることが出来るのだろうか。

シナリオの背景

 人間の脳に侵入し、己の暇つぶしのためにその人格を破壊し、おぞましい拷問を行っては殺してしまう残忍な生物、”シャッガイからの昆虫(シャン)”。星空荘はシャンが、自身の崇拝する邪神に贄を捧げる為、また新しい”玩具”を手に入れるために張った罠だった。シャンは探索者と同様に星空荘を訪れた女性・宮木沙織に潜み、獲物を見定めるように探索者達の事を見つめている。

 

シナリオを始めるにあたって

探索者について

  • プレイヤーが職種・技能など自由に作成してください。
  • 「導入パート」の項の「導入:動機作り」の項に記載されているように、探索者は何らかの理由で星空荘を訪れる必要があります。キーパーはそのことに留意してください。

登場人物(NPC)について

※詳細は別途資料「 登場人物一覧(キーパー用) 」をご参照ください。
 
<登場人物の簡易的な説明>

星野 康臣(ほしの やすおみ)

”星空荘のオーナー”

年齢:48歳 職業:オーナー

星空荘の経営者。シャンに脳を侵され、シャンの意志に従うだけの傀儡と化している。

宮木 沙織(みやぎ さおり)

”シャンに憑かれた女”

年齢:21歳 職業:大学生

シャンに脳を侵された女。今回のシナリオの黒幕として、探索者達に魔の手を伸ばす。

秋田 哲也(あきた てつや)

”普通の大学生”

年齢:21歳 職業:大学生

宮木に誘われて星空荘に赴いた、宮木の幼なじみ。シャンの影に気づき、怯える。

明智 恭介(あけち きょうすけ)

”私立探偵”

年齢:32歳 職業:探偵

茅ヶ岳に行くと言った後に行方不明になった友人・加倉の手がかりを探す途中、星空荘に辿り着いた。

加倉 恵太(かくら けいた)

”行方不明の男”

年齢:30歳 職業:会社員

趣味の写真撮影の為に茅ヶ岳を訪れ、そこでシャンに襲われ、殺されてしまった。

新庄 蓮(しんじょう れん)

”星空荘の常連”

年齢:47歳 職業:会社員

星空荘に、その休業前にも幾度か訪れたことのある常連。かつての星野や星空荘の様子を知っている。

<神話生物の簡易的な説明>

シャッガイからの昆虫(シャン)

”元凶”

人間の脳に侵入し、その人格・精神を破壊しては拷問の後に殺してしまう、残忍な昆虫怪物。ザーダ=ホーグラを崇拝している。

ザーダ=ホーグラ

”果てしなき魔王の化身”

盲目にして白痴、「怪物的な混沌の中心」であるアザトースの唯一しられている化身。

ザイクロトルからの怪物

”奴隷種族”

惑星ザイクロトルの異生物。身体は強靭だが、知性は薄弱であり、シャンによって隷従させられている。

別途資料一覧

 シナリオを進行させるための別途資料を下記に一覧化します。シナリオを進行させる際に適宜使用してください。

<キーパー用資料>

<探索者用資料>

  • なし

 

シナリオ 導入パート

導入:動機作り

 キーパー(場合によってはプレイヤーも)は、下記の星空荘の情報を参考に、探索者が星空荘へ向かう理由を検討し、シナリオの導入部を演出してください。季節は冬、12月中旬ごろです。

<星空荘について>

 「星空荘」は山梨県北部・茅ヶ岳(かやがたけ)にあるペンションです。市街地から離れた山中にポツンと孤立したこの宿は、夜には暗闇に包まれ、空気も澄んでいるため、天体観測には絶好のポイントです。オーナーである星野康臣による天体観測ガイドや、山梨産のワインを使用した料理が評判となり、一時期は知る人ぞ知る人気の宿でした。好評を博していた「星空荘」ですが、一年前、オーナーの体調不良を理由に突然休業してしまいました。ですが、最近になって再び営業を再開するという噂があります。

 上記の通り、星空荘は休業中でしたが、近日中に営業を再開します。このことは休業前の常連客や、オーナーである星野康臣と親しくしていた人々にのみ知らされており、一般の人々には告知されていません。インターネットなどで星空荘の事を調べても、一年前の情報しかありません。

 導入の例を下に記載します。

<導入例①> サンプル探索者

 作家である探索者は、現在、天体観測を主題とした作品を執筆中です。佐藤は、作品の真実味を増すために、美しい星空の下で執筆活動に取り組みたいと考えていました。そして、その事を友人に相談した所、星空荘の存在を知らされます。星空荘は人里離れた山中にあり、夜には満天の星空が見られるとのこと。佐藤は早速、友人を介して星空荘に宿泊の申し込みを行い、このペンションに向かうことになります。

<導入例②> サンプル探索者

 警察官である探索者は、休日には道楽でよく一人旅をしています。次の休日には自然豊かな、静かな場所で過ごしたいと考えていました。その事を友人に相談した所、星空荘を紹介されます。星空荘は人里離れた山中にあり、夜には満天の星空の下、地産の食材を生かしたディナーを食べることが出来ます。鈴木は早速、星空荘に申し込みをし、このペンションに宿泊することにしました。

 キーパーは探索者が星空荘に向かう時の所持品を確認してください。それは、山中にひっそりと立つ山荘に、その探索者が向かうのに相応しい品であることが望ましいです。

導入(基本合流地点):韮崎駅

 キーパーは下記文章を参考にして、導入を行ってください。この章にて、探索者達が合流することが好ましいです。

<星空荘へのアクセス>

 最寄り駅である山梨県韮崎(にらさき)駅から車で30分ほど行った山中に、星空荘はあります。探索者たちは午後1時に韮崎駅に集合するように、星野から事前に連絡を受けています。午後1時には星空荘の所有するワゴンで探索者たちを迎えに来てくれます。(この集合で探索者たちの顔合わせを行うとよいでしょう)

 駅のロータリーにはタクシーが留まっており、それを利用して星空荘に向かうことも出来ます。探索者が車を持っている場合は、それを利用して向かうこともよいでしょう。星空荘は市街地から離れた山中にあるため、交通手段に車は必須になると思われます。

 午後1時より前に韮崎駅のロータリーに行くと、そこには見知らぬ男女(宮木沙織と秋田哲也)が立っています。

 駅を出て、ロータリーに向かうと、冬物のコートに身を包んだ男女が、旅行用のキャリーケースを持って立っていた。男女の吐く息は、凍えるような外気に触れて白く染まっている。二人とも、両手を擦り合わせながら少しでも暖を取ろうとしているが、お互いに身を寄せようとする素振りはない。男女はカップルのようにも見えるし、友人同士のようにも見えた。

 宮木と秋田はこの時、星空荘に向かうために星野が運転するワゴンの到着を待っています。時間を持て余しているため、探索者たちが話しかけると快く応対してくれることでしょう。下記の情報や、登場人物一覧(キーパー用)を参考にして、会話を進行させてください。

<宮木と秋田について>

 宮木と秋田は幼なじみであり、お互いを下の名前で呼び合う仲ですが、恋人同士ではありません。問われれば、共に愛知県の出身で、宮木は大学進学のために東京で、秋田は地元で現在も暮らしていると語ります。二人がこうして顔を合わせるのは、宮木が東京へ出て行ってしまって以来、3年ぶりのことです。今回、宮木の誘いで、天体観測を主な目的として、二人で星空荘に小旅行することになりました。両者共に、星空荘を訪れるのは初めてだと語ります。

心理学:秋田は宮木の話に合わせて大袈裟なリアクションを取ったり、チラチラと宮木の顔を見るなど、宮木の事を恋愛対象として意識しているように傍からは見えます。

<宮木について>

 宮木は1年前、星空荘が休業する直前に、観光目的でこのペンションに訪れていました。そして、そこで星野に潜んでいたシャンに目を付けられ、脳に侵入されました。それ以来、東京に戻った後もシャンによって徐々に精神を蝕まれ、今ではシャンの悪魔的な儀式・拷問に喜んで協力する狂人と化してしまいました。シャンは、宮木の若くて魅力的な美貌を活かして、星空荘に多くの人間を呼び寄せ、自身の”暇つぶし”のために、おぞましい拷問を行おうと考えています。

 午後1時近くになると、駅のロータリーに星野が運転する一台のワゴンが停まります。

 大きな車体に似つかわしい、一際大きなエンジン音を立てて、一台のワゴンが韮崎駅のロータリーに入ってくる。還暦を過ぎた風貌をした男が運転席に見えるそのワゴンの側面には、小洒落た書体で星空荘と書かれている。男は[探索者]たちの前にワゴンを停めると、急いで外に下り、[探索者]たちに声をかける。

「星空荘のお客様たちですね。やあ、皆さん、お待たせしました。私、星空荘のオーナー、星野と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

 星野と名乗った男は、目の窪みが目立ち、とても疲れているような顔に見える。

アイディア・人類学:その疲れたような印象は色濃く、昨日今日で出来た物ではなく、生まれつきの物なのではと感じる。

「ささ、どうぞ中へ。暖房を利かせておりますので、さあさあ」

 星野は不器用に、引きつったような笑顔を浮かべて[探索者]たちをワゴンの車内へ案内した。

<星野について>

 星野は1年と半年ほど前(宮木と出会い、星空荘を休業した時よりも更に半年ほど前)に、脳をシャンによって侵食されました。それ以来、シャンによって精神を破壊されるような醜悪な夢を見させられ続け、1年前に星空荘を休業した後にはシャンの意向がなければ物を言わぬ、自我を持たない廃人のようになってしまいました。シャンにとって星野は最早、己の意志を持たぬ傀儡のような存在ですが、シャンはこの男を飽きた玩具のように廃棄する前に、これを利用してより多くの”玩具(人間)”を呼び寄せようと考えました。

 探索者たちが車内に乗り込むと、ワゴンは星空荘に向けて出発します。ここから30分ほどで星空荘に到着しますが、その車内で探索者たちが誰にどう話しかけるかは自由です。キーパーは登場人物一覧(キーパー用)を参考にして会話を進行させてください。

 ワゴンが韮崎市の中心部である韮崎駅を離れるほど、建物は疎らになっていき、車窓からは山の連なりや冬の木々が見られるようになる。空を見上げると雲一つない、澄んだ青空が広がっている。今夜は綺麗な星空を見ることが出来そうだ。

導入:星空荘に到着

 キーパーは下記文章を参考にして、導入を行ってください。

 茅ヶ岳の道は細く、冬に伴って葉を落とした木々が脇に立ち並んでいる。ひび割れたアスファルトは所々大きく窪んでおり、その上を通過する度に車体が大きく揺れた。

 周囲に人工的な建造物を見なくなってからしばらく行った頃、目の前に木造の洒落たロッジが見えた。道路脇に「星空荘」と書かれた看板が目に入り、その建造物が星空荘であることが分かる。

 ワゴンは星空荘の敷地内に入ると、建造物の入り口の前に停まった。

「さあさあ、皆さん。こちらが星空荘でございます」

 星野は急いでワゴンを降りると、後部座席の扉を開けた。

 星野は全員がワゴンを降りたことを確認すると、探索者たちと共に星空荘に入り、探索者たちを案内します。キーパーは星空荘の地図を探索者たちに提供し、下記を参考にして内部を紹介してください。

<ロビー>

 木造の壁に、天井には梁が見え、温色の照明が照らす、雰囲気のよい室内。入り口側の壁面には大きな窓ガラスがあり、外がよく見える。入り口の横には下駄箱が設置されていて、3足の靴が置かれている。奥の壁には写真が額に入れて飾られている。壁際に小卓が置かれ、そこには固定電話が設置されている。

<食堂>
 大きな木製のテーブルが中央に置かれており、短辺に1脚ずつ、長辺に4脚ずつの合計10人分の椅子がある。奥には対面キッチンが覗いており、壁面に掛けられた調理道具などが目に入る。壁面には大きな窓があり、天井にも天窓がある。

<風呂>

 一般的な家庭にある風呂よりも大きめの風呂場。石のタイルで覆われた床と壁面は温泉のよう。シャワーは2人分並んでおり、一度に2,3人は入ることが出来そうだ。入り口には1畳程度の小さい脱衣所が着いている。

<トイレ>

 個室のトイレが二つ並んでおり、男性用・女性用で分かれている。一般的な家庭で見られるような洋式のトイレだ。手入れが行き届いているようで、清潔感がある。

<洗面所>

 手洗い場が二つ並んでいて、大きな鏡が壁に付いている。石鹸やドライヤー、タオルなどが置かれており、自由に使っていいとのこと。使用済みのタオルを入れておくカゴが隅に置かれている。

<ガレージ>

 室内のドアから移動できる場所にガレージがある。今は空だが、[探索者]たちを運んできたワゴンを置いているようだ。庭を手入れするためだろうホウキや熊手、シャベルなどが壁に立てかけられている。また、隅には洗濯機が設置されている。

<談話室>

 奥にテレビが置かれており、部屋の脇には映画のDVDや雑誌などが収められた棚が並んでいる。宿泊客たちが自由に使用してよい部屋で、映画や雑誌も自由に見てよい。天体観測が出来ない雨の日には、この部屋で星に関するDVDなどを映して、星野による星座の蘊蓄などを聞くことが出来るそうだが、晴れている今日は関係がないだろう。室内には中央テーブルが1卓と椅子が4脚置かれており、男が一人(新庄蓮)、テーブルに向かって雑誌を読んでいた。

 星野は、共有スペースを紹介した後、探索者たちを各自が泊まる部屋に案内します。キーパーはプレイヤーと相談した上、それぞれが泊まる部屋を決定するとよいでしょう。宿泊部屋は全て同じ作りです。探索者は星野から、自身の宿泊する部屋の鍵を手渡されます。

<各部屋>

 木造の雰囲気のよい室内。扉も木製で、施錠が可能。シングルベッド・机・椅子がそれぞれ一つずつ置かれており、部屋の隅にはクローゼットが設置されている。壁の窓からは外がよく見える。

 星野は今からワゴンをガレージに戻してくる旨、夕食は午後7時から、腕によりをかけたご馳走を用意する旨、夕食後に天体観測に出掛ける旨を探索者たちに伝ます。夕食まで、探索者たちの行動は自由です。また、夕食の準備中は、食堂前の扉に「準備中」の札が掛けられるので中に入らないようにと伝えられます。

 

シナリオ 探索パート①

※夕食の時間(午後7時)まで、探索者たちは自由に星空荘を探索出来ます。各場所によって起こるイベントや情報を下に記載します。キーパーは下記情報を参考に、探索者の探索を進行させてください。午後7時になると、定期イベントに進行します。

ロビー

 探索者がロビーを通りかかると、見知らぬ男(明智恭介)が星野に話しかけています。

 ロビーでは30歳前後の風貌をした男が、星野と話し込んでいた。男は何かの写真を星野に対して見せていたようだ。

「そうですか…ご存知ありませんか」

 男は残念そうに言い、写真を胸元に仕舞う。

「はい、すみません。お役に立てなくてね」

 星野は引きつったような笑顔で応答する。その声音は愉快そうで、男の落胆振りとそぐわない。男はその不躾な反応に意表を突かれたかのように苦笑いを浮かべる。

 明智に話しかけた場合、明智は自己紹介した後、星野に見せていた写真を探索者にも見せてくれます。

<加倉の写真>

 加倉が失踪前に撮影した写真です。どこかの川原で撮られた写真だ。背景には大きな川が流れ、その後ろにも山の連なりが見える。写真の中央には紺色のワークキャップ(帽子)を被り、黒いタンクトップにデニム生地のズボンを着ている男の姿がある。日に焼けて、筋肉質な身体は活動的な気質を思わせる。

知識:写真の男が、行方不明で公開捜査されている男だと気が付く。

<行方不明となった加倉>

 加倉恵太は、この年の夏頃から行方不明となっています。この件は加倉の親族から捜索願が出された後、しばらくして公開捜査に切り替えられており、報道もされています。(星空荘内ではこの事件に関する記事などは見つかりません)

「この男は私の友人なんだ。加倉恵太と言う。生き物の写真を撮るのが趣味の古風な男でね。この付近、茅ヶ岳に行くと言って出掛けたまま、行方不明になってしまったんだ」

 男は写真を見つめて目を細める。その表情は何所か物憂げだ。

「私は、加倉を捜してこの場所を訪れたんだ。まさかとは思うが、君達は加倉について何か知っているかい?」

 明智は加倉の情報を求めています。何も知らないと答えれば落胆の表情を浮かべますし、知っていると答えれば詳しく話を聞いてきます。

「ないとは思うが、何か加倉について情報があったら、教えてくれ。こんな場所にペンションがあるなんて幸運だったよ。今日はここに泊めてもらうことになった。君達も宿泊客だろ?よろしくな。」

 そう言うと、男はロビーの出入り口から外へと出て行く。

 明智は外に加倉の痕跡を探すために出て行きました。夕飯時になるまで、彼は外で探索を続けます。

食堂

 星野が中に入り次第、入り口には準備中の札が掛けられます。また、食堂に入るための扉には鍵がかけられ、中に入ることは出来ません。窓も同様に鍵をかけて閉められ、カーテンも閉められます。不自然なほどに中を確認することが出来ません。

 もし、鍵開けなどで中に侵入した場合、そこには誰もおらず、調理をしている様子なども感じられません。探索者たちが外に出た場合、再び扉に鍵が閉められます。

キッチン

 通常は、この場所の探索は出来ません。食堂に入ることが出来ないためです。

 もし、食堂に侵入した場合には、食堂に隣接したキッチンを探索することが出来ます。探索パート②のキッチンの項を参考に描写を行ってください。星野の姿は何所にも見受けられず、また床下収納の蓋は何故か内側(地中側)から固定されているようで、鍵開けによっても開けることは出来ません。

風呂/トイレ/洗面所/ガレージ

 特になし。風呂・トイレ・洗面所などは使用することが可能です。

談話室

 談話室には映画のDVDや、大衆雑誌、天体観測や星座に関する本などが置かれています。置かれている物に、特に不自然な物はありませんが、全て1年以上前に発行された物です(後述あり)。

 談話室に入室すると、下記のように新庄が声をかけてきます。

 談話室に据え付けられたテレビは電源を点けられていない。部屋の中央のテーブルでは壮年の男が棚から取り出したであろう雑誌を幾つか積んで、その内の一冊を読んでいた。男は[探索者]に目をやると、微笑んで挨拶をする。

「やあ、貴方も宿泊されるお客さんですかな。私は新庄と言います。よろしくお願いします」

 新庄は暇を持て余していたようで、探索者達と話をしたがります。

「私は休業前の星空荘にもよく宿泊してた常連なんだがね。暇を持て余して困っていた所なんだ」

 この時、何故暇を持て余していたかなどと聞くと、下記情報を教えてくれます。

「見てくれよ。昔は最新の雑誌なんかを置いといてくれたもんだが、再開したてだからか、1年前の雑誌しか置いてないんだ。古い雑誌ほど詰まらない物はないね」

 そういうと新庄は苦笑いを浮かべる。

 雑誌が全て古い物であることは新庄から聞かずとも、雑誌のある棚を調べて、アイディアのロールに成功することで自身で気が付くことも出来ます。

 その他、新庄との会話を進める中で、以下の内容を知ることも出来るでしょう。

「オーナーは病気で休業していたと聞いていたんだが、何の病気だったんだろう。一年前と比べると別人のように老けこんじまいやがって。本人に聞いてみたんだが、ヘラヘラ笑って教えてくれないんだ。」

「オーナーは人が変わったみたいだ。昔は快活な男だったんだがね、今じゃ何を考えてるのか分からない、腰抜けみたいになっちまった。休業してた理由も案外、心の病なのかもな。一体、何があったのだろう」

「オーナーに奥さんはいないよ。ずっと独身らしい。脱サラして星空荘を始めたと言っていたよ」

「星空荘は昔と変わらんな。一年間休業をしていたが、中を改装したり、そういったことはしてないみたいだ」

 新庄は夕飯時まで、この談話室で時間を潰すことでしょう。

秋田の部屋

 秋田の部屋に、秋田と宮木はいます。部屋を訪れようと扉の前に立った場合、下記の聞き耳ロールを行ってください。

聞き耳:秋田が宮木に「な、なぁ、さっきから何か虫の羽音が聞こえないか?」と聞き、「え?聞こえないよ。気のせいじゃない?」と宮木が茶化すように答えている声が聞こえます。

扉をノックすると、中から応答があり、宮木が顔を見せます。宮木は笑顔で探索者達を中に迎え入れてくれるでしょう。

 部屋の中では落ち着かないように周囲をチラチラと見回している秋田の姿があった。秋田は[探索者]の姿を認めると、頬に力を込めて、無理やりに笑顔を作って会釈をする。宮木は秋田にお構いなしに、部屋のベッドへと腰を下ろした。

 もし探索者が、今何の話をしていたのかなどと聞いた場合は、秋田が下記の内容を話してくれます。

「いや、このペンションに着いてから、なんだか奇妙なんです…。時々、耳の近くを巨大な虫が羽音を立てて通り過ぎて行っているような…そんな音が聞こえて来るんです。貴方は聞こえませんか?」

 秋田は[探索者]達に困惑した眼差しを向ける。

「私は全然聞こえないってば。哲也の気にしすぎだよ!」

 宮木は、おどおどしている秋田とは対照的に楽しそうに笑っている。

<大きな虫の羽音>

 この羽音は、シャンの物です。シャンは宮木の脳から出入りする度に、羽音を響かせており、秋田はこの羽音を聞いてしまっています。鳩ほどの大きさがある異界の虫の羽音は、秋田に得も言われぬ恐怖感を与えています。

 探索者が自分も聞こえないと答えた場合は、「そうですか…やっぱり気のせいなのかな」と秋田は頭を抱えます。

 探索者達が秋田と宮木に、夕食時まで何をするのかと聞いた場合は、秋田は「僕は散歩がてらに、少し外の空気を吸ってこようかと思います」と答えます。また、宮木は「私は昨日、ゼミの飲み会だったから寝不足で。夕食まで自室で少し寝るね」と答えます。そして二人とも、そのように行動することでしょう。

星野の部屋

 星空荘の主、星野の部屋です。鍵がかけられており、通常、中に侵入することは出来ません。この時点で中の様子を開示することは以降のシナリオ進行を大きく改変しなくてはならなくなりますので、もし探索者が鍵開けなどの技能で強引に中に入ろうとした場合は、他の宿泊客を通りがからせ、それを咎めるようにするとよいでしょう。

 そうした制止にも関わらず、探索者が鍵開けを試みた場合、「鍵開けには成功するが、扉は強い力で内側から押さえられているかのように、開ける事が出来ない」などの描写を行ってしまってもよいでしょう。もし、キーパーが、探索者にこの部屋への侵入を許してしまえば、この時点で定期イベント「狂気の晩餐・星野の死」に強引に繋げてしまうなど、キーパーが独自にシナリオを構成していく必要がありますのでご注意ください。

宮木の部屋

 宮木が宿泊する部屋です。鍵がかけられており、通常、中に侵入することは出来ません。星野の部屋と同様に、この時点で中の様子を開示することは以降のシナリオ進行を大きく改変しなくてはならなくなりますので、もし探索者が鍵開けなどの技能で強引に中に入ろうとした場合は、他の宿泊客を通りがからせ、それを咎めるようにするとよいでしょう。

 もし、探索者がそうした制止を聞かずに、この部屋に踏み込んでしまった場合は、他の宿泊客の部屋同様、違和感のあるような物は見当たらない事にしてしまいましょう。宮木に対してこの時点で疑念を持たせてしまうのは、シナリオ進行上好ましくありません。

明智/新庄の部屋

 それぞれの部屋には鍵がかかっています。鍵開けによって侵入することも可能ですが、各々の荷物が置いてあるだけで、特に変わった物は見つかりません。無断で他の宿泊客の部屋に立ち入る行為は、当然、犯罪的な行為ですので、他の宿泊客を通りがからせ、それを咎めるなどすると良いでしょう。

屋外

 星空荘の外を自由に歩き回ることが出来ますが、周囲に人工的な建物などはありません。

 葉を落とした木々が、細い枝を剥き出しにして立ち並ぶ。夏であれば鬱蒼とした樹林であろうそこは、地面に多量の枯葉を敷き詰めて、何所か寂しげな様子を感じさせる。

目星(1時間ごとに1回ロール可能):地面に、何か大きな物体を引き摺ったかのような跡を見つける。

目星1/5(1時間ごとに1回ロール可能):落ち葉に隠れて、紺色のワークキャップ(帽子)が落ちていることに気が付く。

 何かを引き摺ったかのような跡は、ザイクロトルからの怪物がその上を動いた跡です。また、紺色のワークキャップは、加倉が失踪当時に身に付けていた物です。明智が所持している加倉の写真も、その帽子を付けた状態で写っています。そのことに探索者が気が付かない場合は、探索者がアイディアのロールに成功した場合、キーパーからその情報を開示してもよいでしょう。

 このワークキャップを明智に見せた場合、「これは加倉の…何所で見つけたんだ?」「教えてくれて、ありがとう。やはり加倉はこの辺りで失踪したに違いない…」などと、思案に耽りつつも、探索者に感謝の意を述べます。

 

シナリオ 定期イベント

午後7時:狂気の晩餐・星野の死

 このイベントは夕食時、午後7時頃に起こしてください。もし、直前に探索者が食堂に侵入していた場合などは、探索者たちが食堂を離れて、しばらくした頃に起こしてください。

 午後7時頃になると、ロビーに宿泊客たちが集まってきます。食堂には未だ「準備中」の札が掛けられているため、中に入らずに皆、待ち惚けを食わされています。それからいくら待とうとも、食堂から星野が顔を覗かせることはありません。

 ロビーには宿泊客達が集まっていた。食堂には準備中の札が掛けられたままとなっており、皆、思い思いに夕食の時を待っている。

 ロビーの入り口を外に出た所に、秋田と宮木がいる。冬の夜は早く、辺りは既に暗闇に包まれている。秋田は体調でも悪いのか、地面に座り込んでおり、宮木がその横で心配そうに秋田を見つめている。明智はロビーに掛けられた写真を見つめている。新庄は食堂の入り口横の壁に寄りかかり、腕に付けた時計をチラチラと見ていた。

 この時、明智に声をかけると、「この写真、風景から考えると1~2年ほど前に撮られた物のようだが、それにしてはオーナーが今よりも随分と若々しいと思ってな」という話を聞かせてくれます。

 秋田は「探索パート①」の項の「秋田の部屋」の項に記載しました、”巨大な虫の羽音”が鳴り止まず、気を病んでしまっています。

 指定の時間から15分も経つと、新庄が苛立ちを募らせます。

 ロビーの壁に寄りかかっていた新庄は、その場で小刻みに片足を床に当てて鳴らし、苛立ちを募らせていたが、突然に身を起こす。

「一体、いつまで待たせる気なんだ。もう腹が減って仕方がないと言うのに」

 そして、準備中の札が掛かった食堂の扉まで近づくと、

「おい、オーナー。夕食はまだなのかい」

 と言いながら扉の取っ手に手をかけた。鍵が掛かっていないようで、ギィと軋む音がして、扉は開かれた。扉を開けた新庄は口をあんぐりと開けたまま、その場で時が止まったかのように動きを止める。[探索者]は一陣の風が吹いたように感じる。と、同時に、鉄分が塊となって自身の鼻腔に捻じ込まれたかのような、圧倒的な血生臭さがロビー全体を覆った。

 皆、何事かと食堂を覗き込もうとします。秋田や宮木もロビー室内に戻ってきます。

 食堂は、昼間の穏やかな様子から一変していた。そこには見慣れぬ光景。惨劇の様子に[探索者]の思考は堂々巡りに陥った。

 テーブルの上には、食事など置かれていなかった。そこには人間が、忌まわしい神への供え物のように置かれていた。人間は四肢を伸ばされ、手のひらや足の甲を大きな釘のような物でテーブルに打ち付けられていた。腹部は衣服ごと引き裂かれ、内臓が内側から引き摺り出され、泥団子のような奇怪な形を作っている。そこから血がドロドロと流れ出し、辺りは血の海と化していた。重く激しい異臭が、室内に立ち込めている。

 その人間は間違いなく死んでいるだろう。人間の顔は、恐怖からか、苦悶からか、酷く歪んでいた。今はもう見る影もないその顔と、着ている衣服から、この死体が星空荘の主、星野の物であることが分かった。

SANチェック 0/1D4+1

医学:この惨状が、死後に行われた物ではなく、生きたまま行われた拷問であることに気が付く。

<星野の死体>

 この死体は星野がシャンに拷問された跡です。シャンはこの時点で、自我が壊れた星野を玩具として破棄しました。星野は体系的な拷問によって殺され、シャンの崇拝する神、アザトースへと捧げられました。

 星野は、シャンに侵された宮木の手によって無残な死を遂げたのか、はたまたシャン自身の手によって、シャンの持つ科学的凶器によってこのような惨状になってしまったのか、そこは明確には定めません。

 星野の死体を見て、下記のように宿泊客達は行動を起こします。

 新庄、明智、宮木、秋田。宿泊客の全てがこの惨状を見てしまった。思考が渦を巻いて、一瞬、誰もが動きを止めた。

「警察…警察を呼ぼう」

 明智が声を上げる。自らのポケットに手を突っ込み、携帯を取り出す。

「…ダメだ、繋がらない」

 明智が呟く。新庄が自身の携帯を開きながら、それに答える。

「変だな、私も圏外だ。さっきまではそんなことなかったのに。ロビーに固定電話があるはずだ。私が電話して来よう」

 新庄がバタバタとロビーに出て行く。

 探索者達が自身の通信機器を見た場合も、圏外の為に使用不可能です。探索者が、今までの探索で通信機器を使用していたとしても、不思議なことにこの時点から使用が出来なくなります。なお、後述されますが、ロビーにある電話についても何故か不通となっています。星空荘は今後、未知の力(恐らくは高度に発展したシャンの科学的な技術)によって、どのような通信手段も不通となります。

 呆然としていた秋田と宮木だが、突然、秋田が声を上げた。

「あ、ああ…やはり、やはりこの建物には何かがいるんだ!」

 周囲を責めるような強く、困惑した口調。

「俺に近寄るな!」

 秋田はヒステリックにそう叫んだかと思うと、食堂を飛び出して駆けて行った。

「待って!」

 秋田を追いかけるように、宮木も続いて食堂を出て行く。

 直後、

「うわぁぁぁ!」

 ロビーから男女の悲鳴が起こった。断末魔のような、身の危険を感じさせるその悲鳴は、聞いた者の鼓膜に突き刺さるような悲痛な物だ。明智は悲鳴のした方向へと走り出す。

 ロビーへ出ると、泣き声のような悲鳴を上げて、自室の方へと走っていく秋田の後姿が見えた。新庄は固定電話の受話器を耳に当てた状態で、腰を抜かしたようにロビーの隅でへたり込んでいた。宮木は言葉を失い、自失したようにロビーの入り口、そこから見える外界を見つめている。

 そして、その視線の先。彼女らを恐怖に陥らせた物を、[探索者]たちも凝視してしまう。ロビーの入り口の横にある、大きな窓。そこから見えるはずの外界に、不可思議な物があった。

 5mほどの高さがある、灰色で金属質な、海底にたなびくポリプのような何か。奇怪な芸術作品のようなそれは、闇夜に身を煌かせ、星空荘の外に数体が散在している。その身体からは太い円筒形の枝や、平たい根のような形状を突き出させ、金属質のそれをミミズのようにうねらせて、こちらに近づいて来る。ミミズのような触手が地面を打つ度、大きな衝撃音と土煙と共にその場の土を抉り、触手が持つ力の強さを誇示するかのようだ。外界に散在する内の一体が巨躯を屈めて、玄関の窓にその上端、目鼻の付いていない楕円形状の頭を寄せた。楕円形状の上端には穴が開いており、その穴はゆっくりと伸縮している。穴が伸縮する度に、ブォォと言う排気音と共に、冷えた窓に吐息を当てたように眼前の窓ガラスを曇らせる。とてもこの世の物とは思えないその何かは、目鼻がないと言うのに、生物のような強い意志を剥き出しにしている。それは捕食者が獲物を見つめる、無意識の殺意。理由や根拠は分からないが、[探索者]達は直感する。この奇怪な怪物は、自分たちを圧倒的に凌ぐ凶悪な捕食者であり、自分たちを食らう為に外で待ち構えていると。不意に星空荘の彼方此方が軋む音を立てる。重い何かが纏わり付いて、建物全体を絞り上げているかのような音だった。ミシミシと言う音が絶え間なく室内に木霊する。星空荘は、この怪物に包囲されてしまったようだった。

SANチェック 0/1D6

 上記の奇怪な怪物は、”ザイクロトルからの怪物”です。この時点で、建物を八方から取り囲むように外界に存在し、探索者達をこの星空荘に閉じ込めています。各部屋の窓ガラスには、この怪物が頭を覗かせていることでしょう。もし、探索者達がこの建物から出ようと試みるなら、容赦なく探索者達に襲いかかります。その一撃は無慈悲で、強力な物です。なお、探索者が自身の自動車などで訪れていた場合は、外に駐車された車は無残にも破壊されていまい、使用することが出来なくなります。

<ザイクロトルからの怪物>

 この怪物は、肉食性の生物です。強靱な身体を持ちますが、知性が薄弱で、シャンによって奴隷として使われています。この怪物達は、探索者達が星空荘から逃げ出さないためにこの場に呼び出されています。

「なんなんだ、こいつらは…」

 明智が呟く。外に湧いて出た怪物を無意味に刺激しないためか、とても小さな声だ。

「こいつらは危険だ。ここから逃げ出さないと…」

 明智は思案するように眉間に手を当てる。

「車…車だ。ガレージにワゴンが置かれている。あれに乗って逃げ出すんだ。車のキーを探そう」

 そう言うと明智は食堂へと戻っていく。腰を抜かしていた新庄は、震える手で受話器を電話に戻す。

「電話は繋がらなかった。電話線が繋がっていないようだ。外の化け物に引き千切られたのかもしれない」

 新庄は[探索者]にそう伝えると、明智の後を追って食堂へと戻っていく。

「わ、私は哲也を呼び戻してくる」

 宮木はそう言うと、秋田の部屋の方向へと駆け出した。

 明智は星野がワゴンの鍵を所持していると考え、食堂に向かいました。新庄は、率先して事態に対処しようとしている明智を当てにして、その後に付いていきました。

 この時点から、探索者達の2回目の探索パートが開始されます。

 

シナリオ 探索パート②

※上記の定期イベント「狂気の晩餐・星野の死」から、探索パートは第二段階へと移行します。このパートでは星空荘はザイクロトルからの怪物に包囲されている状態となります。何の手立てもないまま、探索者が無謀にも星空荘から脱出を試みた場合には、この怪物の無慈悲な攻撃を与えてください。怪物の力は強大で、無事に逃げ延びることが出来る探索者はいないのではないでしょうか。

※探索パート②において、探索が長引いて朝になり、空が白んできてしまっては拍子抜けです。そのような場合は、シナリオが長引く前に、エンディングCの項に則ってシナリオを終了させてしまいましょう。エンディングCは探索が上手く行かなかった場合にシナリオを打ち切る、ゲームオーバーのようなエンディングです。このシナリオは時間制限付きで、早くに脱出をしないとゲームオーバーになってしまう旨を、事前にプレイヤーに伝えておいても面白いかもしれません。

食堂:星野の死体

 定期イベント「狂気の晩餐・星野の死」の直後、明智はガレージに停められたワゴンの鍵を探すために、星野の死体が身に付けた衣服を検めるべく、食堂に戻りました。新庄も明智を手伝おうと考えて、食堂に立ち入っています。

 定期イベント「狂気の晩餐・星野の死」からしばらく経過した後に探索者が食堂を訪れた場合には、探索者は明智と新庄がワゴンの鍵を見つけることが出来ず、その代わりに星野の部屋の鍵を見つけて食堂を出ようとしている所に出くわすことになるでしょう。その際はこの項の後半を参考にシナリオを進行させてください。

 [探索者]は食堂に立ち入る。異臭が立ち込める中、明智が星野の無残な死体をその着衣越しに触りながら、ポケットの中に入っているものがないかを確認していた。物怖じする様子も見せず、手早く死体を改めている明智とは対照的に、惨たらしい様子に言葉を失い、手を出しかねている新庄が傍に立ち尽くしている。

目星:星野が固定されているテーブルの下、目に付きにくい物陰にカード状の何かが落ちていることに気が付く。

 このカード状の物は星野の免許証です。星野の生年月日(3月13日)や星空荘の住所が記載されています。

 探索者が明智と共に星野の死体を検める場合は、目星でロールしてその成否を判定してください。もし成功した場合は下記のように探索者が星野の部屋の鍵を見つけることとし、失敗した場合には明智が見つけたことにするとよいでしょう。

 ジャラジャラと言う小さい金属同士がぶつかり合う音を鳴らし、[探索者]は星野のズボンのポケットから何かを見つけた。血で汚れているそれは、どうやら鍵のようだ。

「…車の鍵ではないな。部屋の鍵のようだ」

 その鍵を見た明智は言った。[探索者]の目にもそのように見えた。明智は死体を検めていた手を止める。

「他には何も見つからなかった。もしかしたらオーナーの部屋に置かれているのかもしれないな」

 明智は[探索者]の意見を伺うように、その目を見つめた。

 これ以降、キーパーは明智を探索者を誘導・補助するサポート役のNPCとして活用してください。探索者が探索に行き詰った場合には、明智を利用して助言を与えるとよいでしょう。明智は探偵ということもあり、探索に関して非常に有用なNPCです。

 また、新庄についても同様に誘導・補助するサポート役のNPCとして活用してください。新庄は星空荘の常連ですので、過去の星空荘や星野について、宿泊客の中では最もよく知っています。新庄の別の活用方法としては、シャンやザイクロトルからの怪物に新庄を襲わせて、探索者の恐怖を煽ることも考えられると思います。探索者が無策に星空荘を脱出しようとした場合には、探索者よりも先に新庄がザイクロトルからの怪物の攻撃を受けて、その危険性を探索者達は思い知ることになるでしょう。新庄が一人で行動することになった場合には、星野のような奇怪な死を遂げるような事態も考えられるのではないでしょうか。

キッチン:床下収納

キッチンは食堂と対面式の物です。

 対面式のキッチンは、食堂から壁や扉に遮られずに行くことが出来る。三口のガスコンロ、大きなシンク、一般的な調理道具が見受けられる。また、壁際には食器棚や冷蔵庫、ワインセラーなどが置かれている。床には大きな床下収納が据え付けられており、その蓋が見える。見る限り、キッチンには荒らされたり、争ったような跡はないようだ。

 冷蔵庫を開けると中には僅かな食材しかありません。また、その食材を調べると、傷んでいたり、賞味期限を過ぎている物が多く見受けられ、管理が行き届いていないことが分かります。とても、今日宿泊客を持て成そうとしていたようには見えません。

 食器棚やワインセラーを調べた場合、アイディアに成功すると、それらが埃を被っていて、長らく使用されていなかったことが分かります。

 調理道具は、一般的な料理に使用する物であれば大抵置かれています。包丁などを探索者が確認したとしても、血の付いた物などは見受けられません。
 

 床下収納の蓋は170cm×70cmほどの大きな物です。内側から何かで固定されているのか、はたまた何かが開口部にこびり付いているのか、簡単に開けることは出来ません。鍵開けかSTR抵抗ロール(10)に成功した場合は、その蓋を開けることが出来ます。

 蓋を開けた瞬間、食堂から漂っていた血生臭さとは異なった性質の、更に強烈な臭いが[探索者]の鼻腔に突き刺さる。今までに経験したことのないような、嗅いだ者を薙ぎ倒すような腐敗臭。開放された床下収納の中には、突然に降り注ぐ外界の明りに反応してなのか、その身をくねらせる、視界を埋め尽くした大量の蛆虫。それらが食しているのは、泥のように変質した大きな肉の塊。所々を虫に食い尽くされて、骨をむき出しにしたそれは、ボロボロになった何か、衣類のような物を身に付けていて。改めて見直して見れば人間の身体のようにも見え、[探索者]はその頭に当たる部分を覗き込む。もう見る影もないが、目・鼻・口、そこには頭蓋骨のような物が覗いていて、その肉塊がかつては人間だっただろう事を[探索者]は理解してしまう。

SANチェック 0/1D4+1

目星:床下収納に押し込められた肉塊に埋もれるようにして、一眼レフのカメラがあることに気が付く。

<床下収納に押し込められた死体>

 この死体は、明智の友人である加倉の物です。加倉は、失踪直前に茅ヶ岳を訪れ、そこでシャンに捕縛され、拷問の末に殺害されました。死後、床下収納に放置され、遺体は無残に腐敗してしまっています。

<一眼レフのカメラ>

 加倉が失踪直前に使用していたデジタル一眼レフカメラです。壊れていて、使用することは出来ませんが、カメラに差し込まれたSDカードを取り出せば、そのデータをパソコンで読み取ることが可能です。中には野鳥や、自然の景色の画像データが多数収められています。幾枚かには加倉自身が写った物もあり、カメラが加倉の所持物だったことを物語ります。

 そして、画像データの最後の1枚は、手振れが酷く、何を撮ったのか判然としませんが、奇怪な物が写っています。それは鳩ほどの大きさはある、宙を飛ぶ何かの影。逆光のために詳細な姿は分かりませんが、角ばった羽のような影から昆虫のようにも見えます。

 上記の画像はシャンが写された物です。余人には何を撮った物なのか分からないでしょうが、一度でもシャンを見たことのある者であれば、その影がシャンの物であると理解し、恐れることでしょう。

 死体を明智が見た場合は、下記を参考にシナリオを進行させてください。

「加倉…?」

 [探索者]の傍で、荒い呼吸と共に呟かれる微かな声。見向けば、明智が目を見開いて床下収納の中を凝視していた。

「まさかな…」

 明智は自分に言い聞かせるように改めて呟いた。そして、雑念を振り払うかのように頭を振り、力強く立ち上がる。

「一刻も早くここを脱出しよう。何が起きているのか理解できないが、私達の身も危ないことは間違いない」

 明智は衣類やカメラから、加倉ではないかと疑念を持ちますが、緊急時の現状ではそれを詮索せずにおくことでしょう。

星野の部屋

 星野の部屋に向かう場合、途中、秋田の部屋の前で、扉越しに室内へと声をかける宮木の姿が見受けられます。その描写については「探索パート②」の項の「秋田の部屋」の項を参考にして行ってください。

 星野の部屋には鍵がかかっています。星野の部屋の鍵を見つけて使用するか、鍵開けに成功しなければ中に入ることは出来ません。中に立ち入った場合は下記を参考にしてイベントを進行させてください。

 星野の部屋に立ち入る。中は、[探索者]の宿泊部屋の造りと異なっており、そして、物ぐさな者が暮らす部屋のように汚れていた。その部屋を覗き込むように、星空荘を囲った怪物が窓から頭を見せている。部屋の隅の壁際には一組の机と椅子があり、その机の上にはパソコンが置かれている。机と反対側の壁面には、ベッドや、本の詰まった本棚が設置されている。床にはゴミ袋や空のペットボトル、缶などが転がっており、所々に吐しゃ物が乾いたような汚い跡が見て取れた。無数の小バエが部屋を舞っており、とても、星野がこの場所でまともな生活をしていたようには見えない。

 星野の部屋は星野がシャンに取り付かれて以来、荒れ放題となっています。この部屋を新庄が見た場合、「オーナーは綺麗好きで、とてもこんな部屋で暮らすような人じゃないんだが…」と話すでしょう。

 本棚には天体観測に関する本や、ペンションの経営に関する本など、星野が仕事で使用していただろう本が並んでいます。

図書館:本棚の中に、星野の手記があることに気が付く。

<星野の手記>

 この手記は、シャンに憑かれた星野が書いた物です。毎日のように見てしまう想像を絶した悪夢や、頭の中で鳴り響く羽音、薄れていく理性によって恐怖を感じていた星野は、少しでも自我を保つために日記のように自分の状況を記載していました。ですが、正気を失いつつある星野が書いたこの手記は、内容が断片的で、所々読むことが出来ません。手記に記載されている情報を下に記載します。

 秋の夜空に低くきらめく一つ星。私が最も好きな星だ。耳元で、大きな虫が羽ばたくような音が聞こえるようになって、大分経つ。毎日のように見る悪夢は日増しに鮮明に、おぞましい物へとなっていく。夜眠るのが怖い。睡眠不足からか、頭が朦朧として昼夜の区別がつき辛い。こんな状態が続いていては、仕事どころではなくなってしまう。医者に処方された睡眠薬は全て捨ててしまった。あいつらは何も分かっていない。眠れないんじゃなくて、眠りたくないんだ。

天文学:上記の「秋」「低く」「一つ星」の言葉から、星野が最も好きな星が”フォーマルハウト”(みなみのうお座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ)であることが分かる。北半球では、秋の南の空低くにポツンと光る星です。


 最近、物忘れが激しい。いや、これは物忘れと言うのだろうか。自分が自分じゃないみたいだ。記憶や意識が所々欠けている。今日は気が付いたらキッチンにいて、なんでそこにいるのか自分でも分からなかった。迎えた覚えのない見知らぬ客が親しげに自分に声をかけてきた。一体私はどうしてしまったのだろう。ああ、羽音が鳴り止まない。


 毎晩・毎晩・毎晩・毎晩、醜悪な悪夢に心が壊れてしまいそうだ。朝から胸焼けが止まらずにトイレに吐いてしまったが、その吐しゃ物の中に細かく砕かれた虫の残骸のような物があった。私は一体何を食べてしまっていたのだろうか。苦しい。助けて。


 気が付けば、何所か怪我をしたのか血だらけだった。私の左手の爪が全て砕けていた。私は確信した。私の頭の中には何か化け物がいる。化け物に憑かれてしまったんだ。出て行ってくれ。それか殺してくれ。身体が言うことを聞かない。


母国語/2:手記にとても乱れた字で一文が書かれており、「全てはアザトース様のために」と書かれていることが分かる。

  上記の天文学のロールで、星野が好きな星がフォーマルハウトと分かりますが、これについては星空荘の各所にある天体観測の本を調べていけば、天文学の技能がなくても分かる内容となります。しかし、「一つ星」には「北極星」や「金星」といった意味もありますので、ロールは通常より難しい物となります。図書館と幸運、両方のロールに成功した場合のみ、星野が好きな星がフォーマルハウトであることが分かるでしょう。このロールを振るためには一回につき1d6*5分の時間が必要となります。

 もし、部屋に置かれたパソコンを調べる場合、パソコンの電源は点いたままとなっていることが分かります。しかし、ディスプレイにはログインするための画面が表示されており、実際に操作をするためにはパスワードの入力が必要となります。

<星野のパソコンのパスワード>

 星野のパソコンのパスワードは、”Fomalhaut(フォーマルハウト)”もしくは星野の誕生日である”0313”を想定しています。この日付は、「探索パート②」の項にある「食堂:星野の死体」の項で星野の免許証を見つけていれば知ることが出来ます。

 もし、探索者にとって上記のパスワードを見つけることが難しい場合は、キーパーの裁量でパスワードを決めてしまってもよいでしょう。

 パソコンのログインに成功した場合、非常に簡素なパソコンのデスクトップがディスプレイに表示されます。経理に関するソフトや、天体観測の情報をまとめたサイトへのショートカット、宿帳というタイトルのエクセルデータなどがあります。このエクセルデータを調べる場合、下記を参考にして情報を開示してください。

<昨年末(星空荘が休業する直前)の宿帳>

 この宿帳と名づけられたエクセルデータは、星野が星空荘の宿泊客の名前と、宿泊日を時系列順に記録した物です。この宿帳を調べた場合、星空荘が休業する直前の頃に誰が宿泊していたかが分かります。

 そして、そこで探索者は見覚えのある名前を発見するでしょう。星空荘が休業する直前、最後に星空荘に宿泊した者の名前は「宮木沙織」と記載されています。

 上記の情報は、探索者に”宮木沙織”が星空荘で起きている不可思議な現象と、何か関係があるのではないかと疑念を持たせるための情報です。そのように疑念を持つためには、「宮木は星空荘を初めて訪れると言っていた」という事前情報が必要となるでしょう。探索者が事前にその情報を掴んでいなかったか、その事を忘れてしまっていた場合は、明智に「宮木は星空荘に初めて訪れたと言っていたが…」と話させるなどして、そのことを探索者に示唆しましょう。

 また、宿帳を調べる際に、宮木が探索者達と行動を共にしていた場合は、ここでエンディングへとシナリオは移行します。その場合は「エンディングB」の項を参考にエンディングを演出してください。

 この部屋の探索を終え、部屋を出る段階でシナリオはエンディングへと向かう可能性があります。もし、探索者が昨年末の宿帳を調べ、宮木が何らかの形で、星空荘がおかれた奇怪な事態に関係していると踏み、宮木に話を聞きに行こうとしたり、宮木を取り押さえようとする場合には「エンディングA」の項を参考にエンディングを演出してください。

 また、探索者がこの部屋の探索において昨年末の宿帳の存在に気づかず、今後も気づく見込みがないまま宮木に対して疑念を持つ機会を逸したようであれば、「エンディングC」を参考にしてエンディングを演出し、シナリオを締めくくってください。具体的には、二度三度と星野の部屋の探索を行い、宿帳の情報に辿り着けなかった場合を目安とするとよいでしょう。

秋田の部屋

 秋田の部屋の前では、宮木が閉まった扉越しに、室内へと声をかけています。

「哲也!哲也、出てきてよ!」

 廊下の先、秋田の部屋の前に立った、宮木が扉を叩きながら室内に声をかけている。

「やめてくれ!放っておいてくれ!」

 室内からは声を震わせて、懇願するように叫ぶ秋田の声がする。

「放っておけないよ!そこからでも、外の怪物が見えてるでしょう?」

 宮木は困ったように訴えかけるが、秋田はそれでも放っておいてくれと繰り返すばかりだ。

<錯乱した秋田>

 秋田は、星空荘を囲ったザイクロトルからの怪物にも恐怖を感じていますが、それ以外にも星空荘内部にも存在していると感じている、”不吉な何か(シャン)”にも恐怖を感じています。星野の惨たらしい死体を見て、精神的に追い詰められて逃げ場を失い、錯乱してしまった秋田は何の解決にもならないというのに、自室に引き篭もってしまいました。

 探索者が訪れ、宮木の元に来ると、宮木は困ったように探索者に話かけます。

「ああ、[探索者]さん。ワゴンの鍵は見つかりましたか?」

 この時点で探索者がワゴンの鍵を見つけていることは有り得ません。何故なら、ワゴンの鍵は宮木が所持している(詳細はエンディングの項で説明)からです。探索者が鍵を見つけていないと話した場合は、下記を参考にしてイベントを進行させてください。

「そうですか…」

 宮木は、困惑からか、焦燥からか、眉をしかめて声を震わせる。

「すみません、私は哲也に出てくるよう説得するので、その間に鍵を探してもらえますか」

 宮木は申し訳なさそうに[探索者]に頼んだ。

 ここで、探索者が秋田を宮木に任せ、自身はワゴンの鍵を探す場合は、その後も宮木は秋田の部屋の前で室内に声をかけ続けます。ですが、エンディングまで秋田が部屋を出ることはありません。キーパーは他の項を参考にしながら、探索者の探索を進行させてください。

 もし、探索者が宮木と一緒に秋田を説得しようとする場合には下記を参考にしてイベントを進行させてください。扉をこじ開け、秋田を無理に連れ出そうとする場合にはこの項で別途後述する内容を参考にしてください。なお、秋田は錯乱しており、下記の精神分析か説得に成功しないと会話にならず、部屋を出てくることはありません。

 [探索者]が室内に声をかけても、秋田にその声は届いていないようだ。秋田は我を失ったように喋る。

「この星空荘には何かがいるんだ…殺される…ああ、またあの羽音が聞こえてくる…!」

 すすり泣く音も聞こえ、秋田が錯乱していることが扉越しにも察せられた。

精神分析:錯乱した秋田を落ち着かせることが出来る。秋田を落ち着かせた後に部屋から出てくるよう、秋田に声をかけた場合は彼はそれに従うだろう。

説得-30(もし、探索者が秋田を説得する際の声かけで、プレイヤーが「このままだと助からない」と言う旨を話した場合には左記成功値に+5、「必ず秋田を星空荘から無事に連れ出す」と言う旨を話した場合には更に+10):錯乱した状態(精神分析に成功しない限り、全ての技能値が半減)ではあるが、秋田は部屋の鍵を開けて外に出てくる。

「外の怪物だけじゃない。この星空荘の中にも、何か不吉なモノがいるんです!感じるんです!」

「羽音がするんです。大きな虫が、耳の傍を飛び回っているような。[探索者]さんには聞こえないんですか?」

 この後、秋田と宮木は、星空荘を脱出する術を探す探索者達を手伝うことでしょう。

 もし、探索者達が扉を壊したり(キーパーの裁量次第ですが、二人までのSTRを合計したSTR抵抗ロール[20]程度を目安にしてください)、鍵開けで扉をこじ開けてでも秋田を連れ出そうとする場合は、下記を参考にしてイベントを進行させてください。

 [探索者]が秋田の部屋に立ち入ると、室内のベッドの上で布団を被り、身を震わせて泣く秋田の姿があった。秋田は、部屋に立ち入った[探索者]達を見て、怯えたように少し退く。

「ああ、近寄るな!出て行ってくれ!」

 宮木は秋田に近づく。

「どうしてしまったの?落ち着いて哲也」

 宮木は優しい声音で秋田に話しかけるが、秋田はより一層身を丸める。

精神分析:錯乱した秋田を落ち着かせることが出来る。秋田を落ち着かせた後に部屋から出るよう、秋田に声をかけた場合は彼はそれに従うだろう。

説得-30(もし、探索者が秋田を説得する際の声かけで、プレイヤーが「このままだと助からない」と言う旨を話した場合には左記成功値に+5、「必ず秋田を星空荘から無事に連れ出す」と言う旨を話した場合には更に+10):錯乱した状態(精神分析に成功しない限り、全ての技能値が半減)ではあるが、秋田は部屋の鍵を開けて外に出てくる。

 精神分析や説得に成功しない限り、秋田は泣いてうずくまるばかりで、探索者や宮木の声に応えようとせず、部屋から出ようともしません。秋田とのSTR抵抗ロールなどを利用して、力ずくで連れ出すことも可能ですが、秋田は錯乱した状態にあり、とても探索を手伝うことなど出来ません。

宮木の部屋

 通常のシナリオ進行で、この場所に探索者が訪れることはないでしょう。部屋には鍵がかかっており、鍵開けなどの技能を使用しない限り、この部屋に入ることは出来ません。また、探索パート②においては、廊下には宮木がおり、探索者がこの場所に立ち入ろうとした場合は「こんな非常時にどうして私の部屋に入る必要があるのか」と探索者を咎めるでしょう。宮木は探索者がこの部屋に入る事を好しとしません。

 もし、イレギュラーなシナリオ進行で探索者がこの場所を訪れた場合には、下記を参考にしてシナリオを進行させてください。

 [探索者]の部屋と全く同じ造りをした室内だ。窓からこちらを覗きこむように、星空荘を囲んだ怪物の頭が目に入り、ぎょっとする。部屋の隅には開けられていないキャリーケースが無造作に置かれている。

アイディア:ベッドには皺が寄っておらず使用された形跡はない。

 部屋に置かれたキャリーケースの中は、一組の着替え以外はノートが一冊入っているだけです。一般的な女性が持ち歩くような雑貨の類は一つもありません。ノートを調べる場合は、下記を参考にイベントを進行させてください。

 ノートをめくる。ノートには全てのページに何か、歪な絵のような物が描かれている。乱暴に描かれたその絵は、鉛筆によってとても強い筆圧で描かれており、所々が破れている。彼方此方が手で擦られたように線が掠れており、乱れた線は何が描いてあるのか判然としない。

適当な芸術か製作・アイディア:その絵が、翼の生えた生物を描いた物ではないかと推測できる。昆虫のようだが、脚や口の数が多く、その姿を想像することは困難だ。

 もし、この場所を探索した上で、探索者が宮木のことを怪しみ、星空荘で起きた奇怪な事件と何か強い関係があるのではないかと疑った場合は、エンディングの項へとシナリオは進行します。宮木と行動を共にしていない場合はエンディングA、宮木と行動を共にしていた場合はエンディングBを参考にしてシナリオを進行させてください。

 

シナリオ エンディング

※探索の終盤、エンディングのシナリオ進行についてA・B・Cの3パターンを下に記載します。

エンディングA:宮木と行動を共にしていない/秋田の怪死

 探索者が星野の部屋を探索し、宮木に対して疑念を持つ、もしくは宮木に事情を聞きに行こうとする場合は、このエンディングAを参考にしてシナリオを進行させてください。

 そのような状況は稀だと思いますが、もしもこの時点で探索者が秋田を説得し行動を共にしており、宮木とは別行動を取っている場合は、この項を飛ばし、エンディングA2を参考にしてエンディングを演出してください。

 廊下に出る。廊下には宮木の姿はなかった。怪物に揺さぶられ星空荘が軋む音と共に震える。揺れと合わせるように照明が不気味に点滅し、今にも消えてしまいそうだ。先ほどまで宮木が声をかけていた秋田の部屋の扉。閉められていたその扉が僅かに開いていた。星空荘の軋む音と自分達の吐息以外の音、秋田や宮木の声はここからは聞こえない。

聞き耳:秋田の部屋の扉の前で聞き耳をしたとしても何も聞こえない。

 秋田の部屋の扉は僅かに開いていますが、内部の照明は消されており、扉を開け、部屋の明りを点けない限りは中を確認することは出来ません。秋田の部屋以外、星空荘の内部を確認しても、秋田や宮木の姿は見つかりません。

 明りを点ける。天井に据え付けられた照明が、コンコンと高い音を鳴らしながら部屋の中を照らし出した。部屋は赤く染まっていた。床には血溜まり、天井や壁にも色濃い血しぶきの痕跡。流されて間もないだろうその血は、鮮やかでおぞましい。部屋の中央には、白目を剥き、地獄の苦しみに顔を歪ませたであろう秋田の頭が、胴体から切り離されて転がっており、その直ぐ傍には力なく倒れ込んだその胴体があった。

 秋田の部屋には宮木の姿はありません。状況はエンディングA2の移行します。エンディングA2を参考にして、エンディングを演出してください。

エンディングA2:宮木の凶行

 シャンに憑かれた宮木が、探索者達に襲いかかります。下記の描写を参考にしてイベントを進行させてください。

 もし、エンディングAにおいて秋田の死体を見つけている場合は、秋田の死体から最も遠い位置にいる者の元に、宮木が現れ、襲い掛かることを想定しています。秋田の部屋の中で最後尾にいる者や、廊下で周囲に気を配っている者、他の部屋の探索をしている者などの元に現れることを想定しています。宮木に襲われる者は、キーパーの裁量で自由に決定してしまってもよいです。NPCが襲われる場合は、声を上げ、探索者達に助けを求めることでしょう。

 もし、秋田の死体を見つけていない・秋田と行動を共にしている場合は、キーパーの裁量によって、宮木に襲わせる者を決定し、下記のイベントを進行させてください。襲われる者は誰でも構いません。

聞き耳:背後で何者かの気配を感じる。探索者が特に周囲を警戒していた場合は自動成功でよい。このロールに成功した場合のみ、下記の宮木からの攻撃に対して回避の判定をすることが可能となる。失敗した場合が宮木からの攻撃を確実に受けてしまう。

 [探索者]の背後、直ぐ傍に何者かの姿があった。それは血に塗れた宮木の姿だった。虚ろな目で[探索者]を見つめる宮木は、その手に真っ赤に染まった無骨な小刀を持っている。[探索者]がそれを視認すると同時に、[探索者]の視界に青白く点滅する光が視界に飛び込んでくる。

回避:上記の光(シャンの神経ムチによる攻撃。詳細は登場人物一覧(キーパー用)のシャンの項を参照)を回避することが出来る。

 ここからシャンに憑かれた宮木との戦闘が開始されます。宮木の格闘能力は一般的な女性と同等のものですが、凶器となる小刀や、神経ムチの攻撃が探索者達の障害となるでしょう。組み付きなどで取り押さえようとした場合は、宮木の脳に潜んだシャンが神経ムチを使用し、その束縛から逃れようとするでしょう。宮木の凶行を止めようとする場合は、ノックアウト攻撃などで彼女の意識を奪う必要があります。宮木は体力が尽きるか、意識が途切れるまで探索者達に襲いかかり続けます。

 宮木は無言で探索者達に襲いかかります。探索者達が何か声をかけたとしても、それに応答することはありません。探索者が説得などの交渉技能を試みようとした場合は、自動で失敗します。

 キーパーは宮木との戦闘の終盤か、戦闘終了後に下記のロールを忘れずに行うようにしてください。

目星・聞き耳:何か金属製の物が床に落ちる音がする。床に車の鍵(星空荘に停められたワゴンの鍵)が落ちていることに気が付く。宮木の衣服から床に落ちたようだ。

 この段階で上記の目星・聞き耳に失敗したとしても、改めて宮木の身体を検めようとすれば、ワゴンの鍵は見つかることでしょう。ワゴンの鍵に気が付かなかった場合は、ワゴン以外の脱出方法を探索者が考える必要があるでしょう。

 宮木の行動を停止させると、状況が次の段階へと移行します。「エンディング・暴れ出す怪物、姿を現すシャン」を参考にして、この項の続きを演出してください。

エンディングB:探索者が宮木と行動を共にし、宮木を怪しいと考える

 星野の部屋において、星空荘が休業する直前に宿泊した最後の客が宮木であると知った探索者は、そのことについて宮木に問い質そうとするでしょう。その際に、星野の部屋を宮木と共に探索していた場合は、この項を参考にエンディングを演出することになります。

 探索者達に、「何故、宮木の名前が宿帳に記載されているのか」「休業する直前に星空荘に泊まっていたのか」などと質問された宮木は、それに対して受け応えます。キーパーは下記項を参考にしながら、探索者の質問をはぐらかすような回答をしてください。回答に、多少の矛盾や強引さがあっても構いません。むしろ多少強引である方が、探索者に疑念を抱かせるには良いかもしれません。

 宮木は[探索者]の問いに、はにかんだ笑顔を浮かべる。それはまるで悪戯が露見してしまった子供のようであった。その笑顔は、この切迫した状況において異質な物に感じられる。

「私は昔、星空荘に泊まりに来たことがあった」

「かつて、星空荘に泊まったことを隠していたことに特に理由はない」

「私が休業前、最後の宿泊客だったとは知らなかった」

心理学:成功の場合、宮木が自分が置かれた状況を楽しんでいると感じる。失敗の場合、宮木は探索者の質問に困っているように感じる。

 宮木との会話の中で、探索者が宮木に疑念を覚え、その身柄を拘束しようとしたり、危害を加えようとした場合は、引き続きこの項を参考にして、エンディングを演出してください。また、探索者が宮木に対して疑念を抱かなかったか、抱いたとしても拘束や攻撃などの手段に出なかった場合は、これよりエンディングCを参考にして、シナリオを進行させてください。

 探索者が宮木に対して、その身柄を拘束しようとしたり、危害を加えようとした場合は、宮木の様子が一変します。

 宮木は顔を伏せた。そして、肩を震わせる。

「くくっ…」

 押し殺した笑い声。宮木の垂れた前髪から覗くその口角は、不気味なほど上がっていた。

 宮木の手には、いつの間にか何かが握られていた。宮木はその”鞘”を取る。キラリと光ったそれは、鋭い小刀だった。

 [探索者]が行動を起こそうとしたその時、[探索者]の視界に青白く点滅する光が見えた。

 キーパーは無作為、もしくは任意に選択したキャラクターに対して、シャンによる神経ムチの攻撃を与えてください。この攻撃に対しては回避のロールは有効でしょう。

 ここからシャンに憑かれた宮木との戦闘が開始されます。宮木の格闘能力は一般的な女性と同等のものですが、凶器となる小刀や、神経ムチの攻撃が探索者達の障害となるでしょう。組み付きなどで取り押さえようとした場合は、宮木の脳に潜んだシャンが神経ムチを使用し、その束縛から逃れようとするでしょう。宮木の凶行を止めようとする場合は、ノックアウト攻撃などで彼女の意識を奪う必要があります。宮木は体力が尽きるか、意識が途切れるまで探索者達に襲いかかり続けます。

 宮木は狂気に染まった笑顔で探索者達に襲いかかります。探索者達が何か声をかけたとしても、それに応答することはありません。探索者が説得などの交渉技能を試みようとした場合は、自動で失敗します。

 キーパーは宮木との戦闘の終盤か、戦闘終了後に下記のロールを忘れずに行うようにしてください。

目星・聞き耳:何か金属製の物が床に落ちる音がする。床に車の鍵(星空荘に停められたワゴンの鍵)が落ちていることに気が付く。宮木の衣服から床に落ちたようだ。

 この段階で上記の目星・聞き耳に失敗したとしても、改めて宮木の身体を検めようとすれば、ワゴンの鍵は見つかることでしょう。ワゴンの鍵に気が付かなかった場合は、ワゴン以外の脱出方法を探索者が考える必要があるでしょう。

 宮木の行動を停止させると、状況が次の段階へと移行します。「エンディング・暴れ出す怪物、姿を現すシャン」を参考にして、この項の続きを演出してください。

エンディングC:真相を掴めない

 この項では、探索者が事態の真相を掴めず、キーパーがシナリオのクリアが最早困難であると判断した場合に、シナリを強制的に終了させる、言わばゲームオーバーに向けてのシナリオ進行について記載します。

「ウォーン!」

 突如として、狼の鳴き声のような、はたまた暴風の風音のような、不吉で大きな音が星空荘に木霊する。それは星空荘を取り囲むように彼方此方から聞こえる。間違いなく、外の奇怪な怪物たちの鳴き声であろう。それは狩りの始まり、事態の終末、[探索者]達の身の危険を知らせる警鐘のようであった。

 四方から破壊音が鳴り響く。星空荘が大きく揺れる。ドシンドシンと響く轟音に、木材が折れ、砕ける音。

 星空荘を取り囲んでいたザイクロトルからの怪物達が、探索者達の命を狙って、突然活発になります。これからシナリオ中の時間で10分も経てば、建物が倒壊し、外にいる怪物達が星空荘に侵入してしまうことを伝えると、プレイヤーに制限時間を意識させることが出来るでしょう。

 シナリオ中の時間で先ほどの描写から5分ほど経つと、下記のように更に状況は悪化します。

 先ほどから鳴り響く、外界の怪物が暴れる音は大きく、身近に聞こえるようになっていた。最早、建物は倒壊する寸前であろうほど、彼方此方に風穴が開き、外界の冷風が吹きすさぶ。

 上記の描写をした頃には、幾つかの宿泊部屋にはザイクロトルからの怪物が侵入してしまっていることでしょう。

 そして、制限時間になると、下記のようにザイクロトルからの怪物が探索者の前に現れます。

 突如、背後の壁から耳を劈く轟音。大きな鉄球が建物を打ち壊すような衝撃音。振り向けばそこには大きな風穴。そしてそこから身体を突き出す、金属質の巨大な化け物。それは波打つ枝のような触手を振り回し、目がないというのに顔ははっきりと[探索者]の方を向いている。触手の風切り音が奏でる高音は鼓膜を突き刺すように[探索者]の心を急速に冷やしていく。刹那、耳元でヒュンと音がして――。

回避:上記の攻撃を避けることが出来る。回避に失敗した場合は触手に掴まれた状態になる。(次のラウンドで丸のみにされる)

 ここから探索者達と、無数のザイクロトルからの怪物との戦闘となります。ザイクロトルからの怪物は四方から次々と現れ、探索者達に攻撃を加えます。探索者達が外に逃げたとしても、この怪物は探索者達を逃すまいと後を追ってきます。探索者がこの追撃から逃げ切ることはまず有り得ないでしょう。

 もし、逃走について、ロールにて成否の判定を行う場合は、キーパーが設定した回数(例:1D3+2回)のDEX抵抗ロールに、全て成功しなくてはならないとするとよいでしょう。もちろん、抵抗ロールの相手はザイクロトルからの怪物です。

 事態の終幕を告げる、怪物達の猛攻を受ける探索者達は、その死の淵の最中に、怪物達に寄り添うようにして楽しそうにこちらを見つめる、宮木の姿を見ることになるでしょう。

エンディング:暴れ出す怪物、姿を現すシャン

 宮木の凶行を止めた探索者達。キーパーは下記を参考にしてエンディングを演出してください。

「ウォーン!」

 突如として、狼の鳴き声のような、はたまた暴風の風音のような、不吉で大きな音が星空荘に木霊する。それは星空荘を取り囲むように彼方此方から聞こえる。間違いなく、外の奇怪な怪物たちの鳴き声であろう。それは狩りの始まり、事態の終末、[探索者]達の身の危険を知らせる警鐘のようであった。

 四方から破壊音が鳴り響く。星空荘が大きく揺れる。ドシンドシンと響く轟音に、木材が折れ、砕ける音。

 この時点から、星空荘を取り囲んだザイクロトルからの怪物達が、シャンの命令によって探索者達の命を狙い、探索者達を目指して行動を開始します。探索者達に時間の余裕はありません。一刻も早く星空荘を脱出しなければ、ザイクロトルからの怪物達は星空荘を破壊し、探索者達に無慈悲な攻撃を加えることでしょう。

 また、宮木という母体の行動を封じられたシャンは、この状況に気を取られている探索者達の目を盗み、新たに誰かの脳への侵食を目論見ます。シャンが寄生しようとする対象は、キーパーが自由に決定してよいですが、決めかねる場合はその場で最もPOWの値が低い探索者とするとよいでしょう。

目星:宮木の頭から、何かの塊がもぞもぞと抜け出してくる所を目にする。このロールに失敗した者は、下記のシャンの様子に気が付かない。

 宮木の頭から、音もなく何かの塊がもぞもぞと抜け出していた。鳩ほどの大きさがあるそれは、光沢のある10本の足と、三角形の鱗に覆われた半円形の羽を持つ、奇怪な虫だった。曲がりくねって両端がくっ付きあったヒゲのような触覚に、3つも付いた口。それは[探索者]が見たことのあるどんな虫とも合致しない、歪な造形。その虫の大きな目が、[探索者]達を見定めるように見つめていた。魂が凍るような、得体の知れない恐怖が[探索者]達の背筋を凍てつかせる。

SANチェック 0/1D6

 その奇怪な虫は、羽を広げ、静かに飛び立つ。質量を感じないような、空に浮くような飛行。その姿はどこか朧気で、今にも空に消えてしまいそうでもある。しかし、その虫が放つ悪意は、まるで実態を持っているかのように鮮明に、醜悪さを滲ませる。

 探索者とシャンの戦闘が開始されます。なお、その場にいる者全てがシャンの存在に気が付かない場合は、シャンは自身の狙った対象の脳内に侵入することに成功してしまいます。しかし、その場では憑かれた者はそのことに気が付きません。シャンはこのシナリオ中、その者の脳内に身を潜めることとなります。

 探索者がシャンを打ち倒せば、後はもう星空荘から脱出するだけです。探索者は所々打ち壊され、大きな風穴が開いた星空荘を走りぬけ、ザイクロトルからの怪物が建物内に侵入する前に、この場を脱出する必要があります。「エンディング・星空荘からの脱出」を参考にして、このシナリオの最後を演出してください。

エンディング:星空荘からの脱出

 宮木が落としたワゴンの鍵を使用し、ワゴンに乗って脱出することを想定していますが、その他に何か脱出のよいアイディアがプレイヤーにあれば、キーパーは積極的にそれを採用するとよいでしょう。下記にはワゴンに乗って脱出する場合の例を記載します。

 先ほどから鳴り響く、外界の怪物が暴れる音は大きく、身近に聞こえるようになっていた。最早、建物は倒壊する寸前であろうほど、彼方此方に風穴が開き、外界の冷風が吹きすさぶ。

 [探索者]達はガレージに向けて走り出す。星空荘内の照明は、そのほとんどが明りを失い、辛うじて薄明かりを保つ心細い光しかない。薄暗闇に包まれた室内を駆け抜ける。

 ガレージに停められたワゴンは無事であった。ガレージも未だ、倒壊していない。しかし、ガレージの出入り口に取り付けられたシャッターは、今にも壊れそうなほど歪み、大きな風穴も開いていた。その風穴から、怪物の頭がこちらを覗きこんでいる。[探索者]が怪物を見た途端、その怪物は大きな叫び声を上げた。遠吠えのようなその声に応答するように、各所から叫び声が木霊する。一際大きい粉砕音が遠くで上がった。

アイディア:シャッターはワゴン車で突入すれば、突き破ることが出来るだろうと推測できる。

 ワゴンで突入する。凄まじい衝撃が車内を襲う。轟音と共にシャッターを突き破り、外界へ飛び出す。

 下記の運転のロールは、探索者が助かるか否かの重要な分岐点となってしまいます。このロールによって今までの探索が水泡と帰してしまうことは、キーパーやプレイヤーにとって好ましくないかと思います。運転の技能に大きくポイントを振った探索者などがいない場合は、この描写をそもそもない物として、自動成功としてしまってもよいでしょう。また、運転の技能に幸運の技能を足してロールするなど、キーパーの裁量でこのシーンを最適な処置で演出してください。

 眼前に立ちはだかる怪物。その脇を抜けようとハンドルを切るが、その怪物から枝のような触手が伸び、行く手を塞ごうとする。

運転:無事に怪物の横をすり抜けることが出来る。

 ワゴンで、惨状を走り抜ける。背後で未だ鳴り響く粉砕音。[探索者]達を追いかけ、向かってくる異形の怪物達。しかし、ワゴンの速度に追いつけず、徐々にその姿は小さくなっていく。怪物達の遠吠え、それも次第に小さな音となっていく。荒れた山道を走り、大きく揺れる車体。強張った身体の緊張は未だ抜けないものの、微かな安堵が[探索者]達の精神に訪れる。

 探索者達が星空荘を脱出し、ある程度の距離を離れると、下記のようなイベントが発生します。このイベントによってエンディングは完了となります。

 助かった、そう[探索者]達が一息吐こうとした、その時。突如、視界が激しい光に包まれる。そして、鼓膜を破らんばかりの爆音。目の前で大きな雷が幾撃も直撃したかのような、命を削る衝撃的な光と音。爆撃か、隕石か。状況の理解など到底出来る訳もない。何が起きたかも分からないまま、[探索者]達の意識は、糸が切れたように途切れてしまった。

<激しい光と爆音>

 この爆音と光は、ザーダ=ホーグラ(アザトースの化身)が星空荘に召喚されたことによって生じた爆発です。外なる神であるアザトースの力は、何をも凌駕した圧倒的な物です。シャンが悪魔的な儀式によって崇拝し、召喚されたザーダ=ホーグラは、気紛れに周囲の物を根こそぎ破壊し、その姿を消しました。

 探索者達は危うく、その爆発に飲み込まれる所でした。ザーダ=ホーグラの意向次第で、無限に広がっていくその爆発が、探索者を飲み込まずに鎮まったのは奇跡と呼べるほどの幸運です。

 柔らかな光で[探索者]が目を覚ます。何所か見覚えのある山道。その道から、はみ出すようにして停車したワゴン。車内には、星空荘での惨劇を共に体験した者たちが気を失っている。太陽に照らされ、明るい車外。遠くから、山鳥のさえずりが聞こえてくる。[探索者]が体験してきた非情な惨劇、それらが嘘だったかのような平和な空間。身体から力が抜けたまどろみの中で、[探索者]は状況を理解しかねる。しかし、[探索者]は実感した。自分はあの悪夢のような忌まわしい場所から脱出し、平穏な世界へと生還したのだと。

 

シナリオのその後/正気度報酬

※探索を終了したその後の世界についてと、クリア後の探索者への報酬について記載します。

シナリオのその後:星空荘を脱出

 星空荘は探索者達が脱出した後、跡形もなく無くなってしまいました。再びその場所を訪れてみれば、星空荘が建っていた場所を中心として、半径100m以上の大きな円形のクレーターが出来ていることが分かります。円形の内部は空間をそっくり抉り取られたかのように地中深くが剥き出しとなっており、まるで大きな爆発があったようです。

 このクレーターは、探索者達が誰かに語るにしろ語らないにしろ、直ぐに発見されて話題となります。警察関係者や報道関係者が探索者達の元を訪れて、星空荘で何が起きたのかなど、詳細を聞きたがるでしょう。それに対して、探索者達が自身の巻き込まれた不可解な事件のあらましを話したとしても、話を聞きに来た者たちはそれを理解出来ずに困惑するだけです。探索者達が虚言を弄して冷やかしていると怒り出す人もいたかもしれません。探索者達の言葉を喜んで聞くのは、他人の話を一回りも二回りも誇張して書き連ねる、低俗な雑誌の記者達だけでした。

 クレーターについて、公的機関などが科学的な見地から様々な調査をしたとしても、誰もこの巨大な痕跡がどうして出来たのか説明することが出来ません。探索者達の身の回りを調べられても、このクレーターを説明出来るような物は出てきません。警察関係者はこの不可解な事件に途方に暮れることでしょう。やがて、星空荘で死んだ者達は行方不明として扱われ、この事件は時が経つにつれ風化し、人々に面白おかしく語られる怪異譚の一つとなるでしょう。

 探索者達は事件直後は世間の脚光を浴び、様々な方面から矢面に立たされるでしょうが、いずれは平穏な日常を取り戻します。その後の彼らの人生は、彼らの意思で切り開かれていくでしょう。

 ただし、シナリオ中にシャンに目を付けられ、脳内への侵入を許してしまった者のその後は、大変おぞましい物です。毎晩の精神を抉るような悪夢。不気味な羽音。自分の中に入り込んだ何か。拷問のように少しずつ壊されていく犠牲者の精神はやがて形を失い、星野や宮木のようにシャンの傀儡と化して、やがては新たな惨劇を巻き起こすことでしょう。

シナリオのその後:全滅

 星空荘で全ての探索者達が死亡した場合は、星空荘の怪異を語る者が誰もいなくなってしまいます。星空荘で探索者達が死亡した数日後、とある民間人によって、星空荘のあった場所に不可解なクレーターのような窪みが出来ている所が発見されます。半径100m以上はある、巨大な円形のその窪みは、まるで大きな爆発があったかのように地面を抉っています。その場所にあるはずの星空荘は跡形もなく、探索者達の姿も見つかりません。この不可解な事件に対して、公的機関などが調査に乗り出しますが、調べれば調べるほど不可思議な事象ばかりで、誰もこの事件に明快な説明をすることが出来ません。やがて、星空荘で死んだ者達は行方不明として扱われ、この事件は時が経つにつれ風化し、人々に面白おかしく語られる怪異譚の一つとなるでしょう。

成功報酬

  • シャンに止めを刺している場合:1d8の正気度報酬
  • 秋田が生存している場合:1ポイントの正気度報酬
  • 秋田と、明智・新庄が全員生存している場合:1ポイントの正気度報酬

 

あとがき

 私のテキスト化2作目の作品です。テキスト化する前の話は診療所を舞台とした全然違う話でした。テキスト化する過程で全く別の話みたいになってしまいました。

 目指した所はシンプル&スタンダードです。クトゥルフ神話TRPGと言えばコレと言えるような、「死体」「手記」「謎解き」「戦闘」「逃走」とかの要素を全部詰めたくて作り始めました。  

 1作目に仕上げたシナリオ「眠り姫の事件簿」が長くなってしまったので、簡単で初心者でもとっつきやすい物にしたかったのですが、色々やってるうちにちょっと複雑になってしまいました。エンディングの所とか。ビギナー向けのシナリオとは言い辛いかもしれません。

 何かシナリオに不足してる所や、問題点などありましたら、コッソリ教えていただければ幸いです。終わりまで読んでくださり、ありがとうございました。(2015/12/30)

-CoCシナリオ, 作者:ホリ, 耶話鳴えオリジナルシナリオ

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